【雑学教室その①】蕎麦屋の看板の文字、読めますか?「変体仮名」の深遠な世界
2026/06/06
いつもブログをお読みいただき、ありがとうございます。
普段はこのブログで、相続や遺言といった少し硬めのお話を中心に発信していますが、今回はちょっと趣向を変えて、箸休めの「雑学教室」をお届けしたいと思います。
皆さんは、街を歩いているときや、老舗の和菓子屋さん、お蕎麦屋さんに入ったときに、「ん?これ、なんて書いてあるんだ…?」と思う不思議な文字を見かけたことはありませんか?
例えば、お蕎麦屋さんののれんに書かれた「き生(そ)バ」の「そ」の文字。なんだか「楚」という漢字を崩したような、あるいは「志」のようにも見える、不思議なニョロニョロとした文字です。
実はあれ、間違いでも看板のデザインでもなく、「変体仮名(へんたいがな)」と呼ばれる、立派な昔のひらがななんです。
皆さんがご存じの様に、今の平仮名はもともとの漢字が、徐々に崩れていって作られましたが、崩れていく途中の文字が変体仮名なのです。
ひらがなは「1つの音に1文字」ではなかった?
「変体」というと、現代ではちょっと怪しい響きに聞こえるかもしれませんが(笑)、ここでの意味は「標準とは形が違う」という意味です。
私たちが今、学校で習うひらがなは「あ」から「ん」まで46文字。1つの音に対して、文字は1つしかありませんよね。例えば「い」の元になった漢字は「以」です。
しかし、明治時代の初期までは、1つの音に対して複数のひらがなが存在していました。
例えば、「い」という音を表すために、「以」だけでなく、「伊」「意」「移」といった様々な漢字を崩したひらがなが同時に使われていたのです。当時の人々は、その時の気分や文章の流れ、見た目の美しさで、これらの文字を自由に使い分けていました。
日本人は、見た目の美しさは重要ですから、例えば、今の「し」でも、変体仮名だと「し」の上に「、」がついて、なんとも味わいがあります。
これが「変体仮名」です。当時は100~200種類以上のひらがなが日常的に飛び交っていたと言われています。
それが明治33年(1900年)の小学校令によって、「これからは1つの音に対して、この1文字だけに統一しましょう!」と国が決めたことで、現在の46文字以外のひらがなは、一気に表舞台から姿を消してしまいました。
今でも私たちの身近に残っている
表舞台からは消えたとはいえ、実は私たちの暮らしの中に、この変体仮名は今もひっそりと生き残っています。
先ほどのお蕎麦屋さんの「生そば」の他にも、
うなぎ屋さんの看板の「うなぎ」の「な」(「奈」の変体仮名)
お汁粉屋さんの「しるこ」の「こ」(「古」の変体仮名)
高級な和菓子のパッケージ
などに、老舗の伝統や風情を醸し出すために今でも使われています。
さらに言うと、実は「名前」に使われていることが多いです。。 ご高齢の方の戸籍などを拝見すると、女性のお名前で「ゑ」や「ゐ」の他にも、この変体仮名がそのまま使われていることが非常に多いですね。女性にこれらの、曲線を使った字を当てると柔らかくなりますからね。
なぜ急に、こんな話を書いたかというと…
「趣味らしい趣味がない」と公言している私ですが、実は仕事柄、この変体仮名とは切っても切れない縁があります。
相続の手続きでは、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの「古い戸籍(除籍謄本など)」を何冊も遡って読み解いていく必要があるのですが、明治や大正時代の古い戸籍は、すべて当時の役人の「手書き」です。
そこには、達筆すぎる文字や、この「変体仮名」が日常的に使われています。 初めて見たときは「暗号か!?」と思うような文字も、LEDライト付きの拡大ルーペで、前後の文脈を追いながら「あ、これは『奈』を崩した『な』だな」と解読していく作業は、どこか歴史のミステリーを解くような、不思議な面白さがあります。
特別な趣味と言えるほどではありませんが、日々こうして古い文字と格闘しているうちに、街で見かける看板の文字にも、自然と目がいくようになってしまいました(笑)。
最後に
もし、お散歩の途中や旅先の温泉街などで、読めない不思議なひらがなの看板を見かけたら、ぜひスマホで検索してみてください。 「あ、これはあの漢字が元になっているんだな」と分かると、いつもの見慣れた景色が、少しだけタイムスリップしたような新鮮な景色に見えてくるかもしれません。
今回は私のちょっとマニアックな(?)日常の視点をお届けしました。
「こんな雑学も面白いね」と思っていただけましたら、また時々、仕事の合間に見つけた面白いお話を書いてみたいと思います。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
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つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗
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