【三部作・第一話】妻が遺したタンス預金の1500万円。「任せきり」だった家族の思い込み
2026/05/30
相続のご相談を受けていると、法律の本には載っていない、それぞれの「家族のドラマ」に立ち会うことがよくあります。
先日も、亡くなられた奥様の手続きについて、80代のご主人と、その長女様が事務所にお越しになりました。
ご主人は多くを語らない寡黙な方で、主に長女様が心配そうにこれまでの経緯をお話ししてくださいました。このご家族のケースが、今まさに「家計はパートナーに任せきりだなぁ」と思っているすべての方にとって、決して他人事ではない「ある盲点」を教えてくれるのです。
今回は、三部作に分けてこのリアルな事例をお届けします。
驚きの「遺品」と、数えたことのない現金
ご相談に来られたご主人は、現役時代、マスコミ関係の第一線で激務をこなされてきた方でした。 大変な高収入でいらっしゃったこともあり、現在の年金額を伺うと、なんと年間約500万円。非常にゆとりのあるセカンドライフを支えるだけの十分な収入をお持ちでした。
しかし、長年連れ添った最愛の奥様が急逝されます。
葬儀が落ち着き、遺品を整理していたところ、ご家族が直面したのは、自宅の金庫に眠る数百万円の現金。 さらに、奥様名義の銀行の貸金庫を開けてみると、そこには1,000万円を超える現金が整然と収められていたのです。
合わせて1,500万円近くにおよぶ、まとまった現金。 お仕事一筋だったご主人は、自宅や貸金庫に現金があること自体は知っていたものの、「中身はすべて妻に任せていた」ため、正確にいくらあるのかは数えたこともありませんでした。
「一体、全体でいくらあるんだろう……」
奥様が亡くなられた今、ご主人の表情には、実態が分からないことへの小さくない不安が滲んでいました。
「これはすべて、妻の財産だから」
長年、家計のすべてを奥様に任せきりにしてきた結果、ご自身でも全容が把握しきれなくなっていたのです。
しかし、私が詳しくお話を伺う限り、その巨額の現金の原資(出どころ)は、ご主人の現役時代の高い給与や、退職後の高額な年金の一部を、奥様がコツコツと積み立ててこられたものに間違いありませんでした。
ところが、寡黙なご主人は、ぽつりとこう言い切られたのです。
「あの金庫は妻が管理していたものだから、すべて妻の相続財産(遺産)です」
長年、外で働く自分を支え、家庭を守り、上手にやりくりしてくれた奥様への信頼と敬意があるからこそのお言葉だったのかもしれません。ご家族の中では「お母さんが遺してくれたお母さんのお金」という認識で一致していたのです。
「家族の認識」と「税務署の常識」の恐ろしいズレ
ここで多くの方が、このご主人の言葉に共感するのではないでしょうか。
「奥様名義の貸金庫や、奥様が管理していた金庫の現金なんだから、当然、奥様の遺産でしょ?」 「手元にある現金なんだから、そのまま奥様の遺産として手続きしても問題ないよね?」
実は、ここに行政書士などの専門家や、税務署から見た「恐ろしい落とし穴」が隠されています。
結論からお伝えすると、たとえ家族が「お母さんの遺産だ」と言い切り、奥様名義の金庫に保管されていたとしても、その原資が夫の年金や給与であるならば、それは税務上「夫の財産(名義財産)」とみなされる可能性が極めて高いのです。
「えっ? 妻の金庫にあったのに、妻の遺産にならないの?」 「そもそも、税務署に言わなければ分からないんじゃない?」
そう思われた方も多いかもしれません。しかし、本人が「数えたことがないから分からない」と言っていても、税務署は驚くほど正確に「帳尻」を合わせてきます。
なぜ、家族の思い込みは通用しないのか? なぜ、タンス預金は隠し通せないのか?
次回の第二話では、税務署が目を光らせる「名義預金(名義財産)」の正体と、タンス預金がバレてしまう理由について、プロの視点から詳しく解説します。
(第二話へ続く)
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つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗
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電話番号 : 047-406-5995
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