相続放棄を希望されていた事例
●相談者A(長女)のお父様がお亡くなりになりました。相続人はAさんとお母様。
相続財産は土地、家屋(評価額1500万円)、預貯金300万円ほど。Aさんは相続放棄をして、全
ての財産を母に相続してもらいたいというのがご希望でした。
●誤解なさっておられる方は多いのですが、相続放棄というと、言葉が簡単なので覚えやすいの
ですが、実は相続放棄というのは、相続発生後3か月以内に裁判所に申立てをするものです。そ
の審判が下りてから効果が発生します。「自分はいらないので母に全て」とおっしゃる方は相続
放棄ではなく相続辞退といった方が正確です。逆に、本当に裁判所に行って相続放棄をすると、
何が起こるかと言いますと、今回の場合だとAさんは最初から相続人ではなかった(=つまり子
はいなかった)という事になり、相続人はお母様と、生きていればお父様の父母、その父母が亡
くなっていたとしたらご兄弟が相続人になることになります。相続人が増えますので、手続きも
煩雑になります。
●相続の辞退ということですと、話は簡単で、「全ての財産は母が相続する」という内容の遺産
分割協議書を作り、Aさんとお母様が署名、捺印すればよいのです。お子様が、存命のお母様に
全て相続してもらいたいとおっしゃる方は非常に多いですので、ひとつ覚えておいていただきた
いと思います。