つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗

自筆証書遺言に不備があり、遺言の一部が無効となって相続人間で対立したケース

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自筆証書遺言に不備があり、遺言の一部が無効となって相続人間で対立したケース

自筆証書遺言に不備があり、遺言の一部が無効となって相続人間で対立したケース

2025/12/01

■1.はじめに

自筆証書遺言は費用もかからず、思い立ったときに作成できるため、非常に多くの方に利用されています。しかし、同時に“形式不備による無効”や“記載内容の解釈トラブル”も非常に多く、当事務所に寄せられる相談の中でも、かなり頻度の高いテーマです。

今回は、“自筆証書遺言が一応は存在しているが、一部に形式不備があり、その部分が無効と判断されてしまった”ために、結果として相続人同士の紛争に発展したケースを取り上げます。
「遺言があるから大丈夫」と思っていても、実務上は“遺言があるからこそ揉める”ケースも珍しくありません。実際にどのような経緯でトラブルに発展し、どのように収束したのか、専門家の視点から詳しく解説します。

■2.相談の背景

●登場人物

被相続人(父):80代後半。自筆証書遺言を残して他界。

長男A:実家から離れて生活。

長女B:父の介護を中心的に担っていた。

二男C:家族とは距離があり、近年はほぼ交流なし。

被相続人である父は、生前から「介護をしてくれた長女に家を相続してほしい」という意思があり、数年前に自筆証書遺言を作成していました。しかし、法務局での保管制度を利用していない昔式の遺言で、専門家の確認も受けていませんでした。

■3.問題となった“遺言の不備”とは

父が残した自筆証書遺言には、以下のような構成が書かれていました。

「自宅不動産は長女Bに相続させる」

「預貯金は3人の子どもで均等に分ける」

「その他の財産は相続人で協議する」

日付・署名はあるが、財産の特定が不十分な箇所が存在

一見すると、十分に思える内容ですが、実務では“特定性の不足”が原因で無効となる部分がありました。

●無効と判断されたポイント

自宅の記載が「自宅」としか書かれていなかった

登記簿上の所在地・地番が書かれていない

不動産を特定できない恐れがある

預貯金の記述も「〇〇銀行の口座」などの記載がない

最後の追記に日付の記入漏れがあった

遺言の“全部が無効”ではなく、“一部だけ無効”という極めて典型的ではあるものの面倒なパターンに該当しました。

■4.相続人間の主張と対立の構図

●長女Bの主張

介護を一手に担ってきた

父は自宅を自分に遺すと言っていた

遺言にその趣旨が書かれている

無効になるなら不公平すぎる、と強く反発

●長男Aの主張

遺言が“自宅をBに”と書いているのは分かるが、不備があれば効力は弱い

相続は法定相続分で進めるべき(兄弟3分の1ずつ)

不動産は売却して分けるべき

●二男Cの主張

「揉めるくらいなら金で解決したい」というスタンス

法定相続分を主張するが、話し合いには消極的

不動産は現金に換えてほしい

本来、被相続人が残した遺言は尊重されるべきですが、形式不備によって“一部が無効”となったことで、相続人それぞれの利害がぶつかり合う結果となりました。

■5.専門家の介入 ― 調停回避が最大のポイント

当事務所が受任したのは、長女B側から「遺言の真意をできるだけ反映した形で決着させてほしい」という相談でした。

●最初に行ったこと:遺言内容の法的検証

自宅の特定ができない→ 無効となる可能性大

預貯金の不備 → 一部無効・一部有効の可能性

全文が無効ではなく、父の意思はある程度読み取れる

特に、不動産の記載の不備は致命的で、裁判所では「不動産を特定できない遺言=無効」と判断されるケースが多いため、強気に「有効」を主張するのは難しい状況でした。

●調停を避け、任意の話し合いで解決する方針へ

調停になると、以下のデメリットがあります。

時間がかかる(半年〜1年超)

兄妹間の感情対立が深まる

最終的に裁判になる可能性もある

そこで、当事務所としては「遺言の部分的な有効性」をベースにしながらも、最終的には “遺留分侵害額請求を踏まえた任意の調整” を軸に交渉する方針を取りました。

■6.解決のための調整案

話し合いの中で、当事務所が提示した解決案は次の通りです。

●不動産(自宅)について

遺言の不備により“長女単独相続”は難しい

しかし父の意思を尊重し、
→長女Bが不動産を相続し、その代わりに長男A・二男Cへ一定額の代償金を支払う案

不動産の査定額を基に代償金を算定

●預貯金について

遺言がある程度有効と考えられる部分を基に、
→3人で均等分け

ただし不動産相続に伴うバランス調整として、多少の割合調整を提案

●介護分の寄与分について

長女Bの介護が実質的に重かったため、
寄与分主張が可能

金額に換算した場合の目安を試算し、協議に反映

■7.最終的な合意内容

数回の面談とオンライン協議を経て、最終的には以下の点でまとまりました。

自宅は長女Bが相続する

長女Bが長男A・二男Cへ代償金を支払う

預貯金は3人でほぼ均等に分ける(長女に若干の上乗せ)

介護負担については、金銭調整で一定程度評価する

最終的には、調停へ進むことなく、任意の遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印して成立しました。

長女Bとしては「父の意思を最大限尊重できた」
長男・二男側も「損をした感覚が薄い」
というバランスの良い解決が実現しました。

■8.このケースから学べる3つのポイント

① 自筆証書遺言は“不備があれば無効”が本当に多い

特に不動産の記載ミスは致命的です。

地番

家屋番号

土地と建物の区別
など、専門家に確認しておくべき点が多数あります。

② “遺言の一部無効”は相続トラブルの典型パターン

遺言が全部無効よりも、実務的には“一部だけ不備がある”方が揉めます。

どこまで有効か?

どこから無効か?

被相続人の真意はどこにあったのか?
が相続人間で解釈の食い違いを生むからです。

③ 早い段階での専門家介入が紛争を防ぐ

今回のケースも、最初から感情的な対立が強く、調停に進んでいても不思議ではありませんでした。
しかし、専門家が間に入ることで感情論を整理し、法律に基づいた合理的な落とし所を提示できたことが成功の要因でした。

■9.まとめ

今回取り上げたケースは、相続の相談で非常によく見られる「自筆証書遺言の不備が原因で相続人が揉める典型例」です。

自筆証書遺言は手軽ではありますが、**“不備があった瞬間に大きなトラブルの芽になる”**というリスクを常に伴います。
被相続人の意思を確実に反映するためには、

遺言書の専門的チェック

公正証書遺言の選択
などが極めて重要です。

つだぬま相続相談室では、
「すでに遺言があるが、内容がこれで大丈夫か不安」
「遺言に不備がありそうだが、どう解決すればよいか」
「相続人同士の話し合いが進まない」
といったご相談を多数取り扱っています。

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つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗
千葉県習志野市津田沼1-13-24-205
電話番号 : 047-406-5995


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