預貯金の相続手続が進まない ― 相続人の一部と連絡が取れない典型例
2025/12/01
相続のご相談を受ける際、「銀行の相続手続がまったく進まない」というお悩みは大変多く寄せられます。相続財産の中でも預貯金は割合としても件数としてももっとも多い財産。銀行の窓口に行き、必要書類をそろえればスムーズに進む…と一般には思われがちですが、実際には多くのご家庭で“最初のハードル”になります。その象徴的なパターンが “相続人の一部と連絡が取れない” というものです。
今回は、このよくある相続手続き停滞問題について、実務の流れや注意点、解決に至る具体的なステップを、できる限り分かりやすく、かつ実務寄りに解説します。
■1 よくある相談:銀行で相続手続が止まってしまった
典型的なご相談内容は次のとおりです。
母が亡くなり、銀行に相続手続をしに行ったら「相続人全員の署名・押印が必要」と言われた
数十年会っていない兄弟がいて、住所も分からない
連絡を試みたが返事がない・拒否される
このままでは亡母の口座が凍結されたままで生活費の支払いに困っている
相続放棄させたいわけではなく、ただ手続に協力してほしいだけなのに…
銀行は法律上、 預金者が亡くなると相続手続完了まで払い戻しをしてはいけない とされており、相続人全員が提出書類に関与しなければ動けません。そのため相続人のひとりでも協力しなければ、手続は完全にストップします。
■2 相続人の一人と連絡が取れないときの対応
▼(1)まずは戸籍で相続関係を確定させる
相続手続の第一歩は、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、相続人を確定させることです。ここで、疎遠になった兄弟姉妹、異母兄弟など、思いがけない相続人が判明することも珍しくありません。
連絡先が不明な相続人については、戸籍の附票や住民票で現住所を確認することができます(職権取得ができる専門家に依頼すればスムーズです)。
▼(2)相続人への通知・協力依頼を文書で行う
口頭の連絡だけでは証拠として弱く、後々トラブルになりがちです。内容証明郵便までは不要でも、最低限、
「相続が発生したこと」
「預貯金の相続手続に協力いただきたい旨」
を丁寧な文書で通知します。
疎遠な兄弟が突然実家から電話を受けた場合、疑心暗鬼になり手続に応じないケースは多くあります。手紙で経緯を説明し、必要書類の写し(銀行様式など)を添付すると、協力を得やすくなります。
▼(3)それでも連絡がつかない場合はどうする?
この段階で応じてもらえない場合、選択肢は次の3つです。
①家庭裁判所で「不在者財産管理人」を選任する
連絡が取れない、住所が不明、音信不通が長期間続く場合に利用します。
選任された管理人が、失踪している相続人に代わって遺産分割協議へ参加できます。
②家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる
相続人全員が出席しなければ調停は開かれませんが、裁判所は連絡のつかない相続人に対し職権で調査・呼出しを行います。それでも出席しない場合は審判へ移行します。
③銀行の「払戻し制度」(一定額のみ)を利用する
2019年改正民法によって、
相続人単独で150万円まで、
銀行から相続預金の払い戻しが受けられる制度ができました。
生活費や葬儀費用が差し迫っている場合、一時的な対応として有効です。
■3 実例:兄弟の一人が「絶対に関わりたくない」と拒否し続けたケース
千葉県習志野市のご相談者(50代女性)の例をご紹介します。
亡母の預貯金700万円
相続人は娘(相談者)と疎遠な兄の2名
兄は「もう関わりたくない。書類は絶対に送らない」と拒否
生活費支払いのため、預金の一部を早く動かしたい
当相談室では次の対応を取りました。
娘様の必要書類を揃え、銀行に「単独150万円の払戻し制度」を利用
同時に家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立て
裁判所から兄へ呼出状が送られ、調停に出席
兄の「母に良くしてもらえなかった」というわだかまりが判明し、面談で整理
結果、調停で円満に合意し、娘7割・兄3割の分割で終了
初期対応を誤らなければ、長期化せずに解決できる典型的なケースです。
■4 専門家に依頼するメリット
戸籍収集・相続人調査を迅速に進められる
疎遠な相続人とのやり取りを代理できる
文書を用いた正式な連絡手段が取れる
調停申立てもワンストップで伴走
銀行ごとの手続の違いを把握している
特に、相続人との関係が悪い場合、自分で直接やり取りすると余計にこじれるケースが多く、第三者である専門家が介入したほうが結果的にスムーズです。
■5 まとめ
預貯金の相続手続きが滞る原因の1位は 「相続人の一部と連絡が取れない」 ことです。しかし実務的に見れば、対処方法は複数存在します。
戸籍での調査
書面での通知
調停
不在者財産管理人
150万円の単独払戻し制度
これらを正しく組み合わせれば、必ず解決に近づきます。
当事務所では、相続人調査から銀行手続、裁判所申立てまで全て対応しております。
「手続が止まってしまった」「銀行に行ったら断られた」などのご相談は、早めのご相談をおすすめいたします。
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つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗
千葉県習志野市津田沼1-13-24-205
電話番号 : 047-406-5995
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