「介護していた長男の“寄与分”をどう認めるかで対立したが、 専門家の計算で合理的に合意に至ったケース」
2025/11/30
相続に関する相談で、非常に多く発生するのが
「介護した子とそうでない子で、遺産配分をどうするか」
という問題です。
法律上、被相続人の財産に貢献した者は、
一定の範囲で 寄与分として遺産から多めに取得できる
と定められています(民法904条)。
しかし実務では、
- 貢献度の評価が曖昧
- 期間・費用・精神的負担の算定が難しい
- 対象となる財産の範囲を巡って争う
- 兄弟姉妹間の感情が入り込みやすい
ため、 揉めやすい典型的トラブル です。
今回取り上げるのは、まさにこの典型です。
■1.状況:長男が15年間母の介護を担当、遺産分割で対立
相談に来られたのは、船橋市在住の G さん(長男)。
母は15年前に父と死別し、G さんがほぼ独力で介護していました。
- 食事・掃除・洗濯・通院付き添い
- 介護用品の購入
- 自宅改修(手すり、段差解消など)
- 医療費・薬代の立替
一方、弟・妹は
- 自宅から離れて生活
- 親の面会は月1回程度
- 費用の負担もほとんどなし
母が亡くなった後、遺産は以下の通りでした。
- 不動産(自宅+駐車場):2,000万円
- 預貯金:500万円
- その他家財:約100万円
合計2,600万円の遺産に対して、
長男は 介護の寄与分を考慮して多く取りたい
と考えていました。
■2.弟妹の主張:「長男だからって全部は認められない」
弟・妹はこう反論しました。
- 「親の介護は家族の義務の範囲でやっただけ」
- 「寄与分の計算は不透明で、財産を不当に減らすもの」
- 「実際に介護したとは言っても、月1〜2回の訪問でも助けになったはず」
つまり、双方の感情が先行し、話し合いは平行線に。
■3.専門家の介入:寄与分の算定と合理的評価
当相談室では、まず 寄与分の法的整理 を行いました。
①寄与分とは?
民法904条で規定される寄与分は、
「被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合に考慮される取り分」 です。
ポイント:
- 生活費・介護の無償労働も対象
- 精神的・時間的負担も評価対象
- 貢献度は金額換算して算定可能
②今回の寄与分の算定方針
- 介護期間
母が要介護1〜5までの15年間 - 介護の内容
生活支援、通院付き添い、家事全般 - 費用負担
立替金、住宅改修費 - 時間換算
15年間、週5日・1日4時間の介護労働と換算
これを基に、経済価値に換算しました。
■4.寄与分の計算例(概算)
- 介護労働:1時間あたり1,000円換算
- 1日4時間 × 週5日 × 52週 × 15年 ≈ 156,000時間
- 156,000 × 1,000円 → 1,560万円
次に、立替金・改修費など実費を加算
- 医療費・薬代:200万円
- 自宅改修費:150万円
- 食費・雑費:50万円
合計:約2,000万円
遺産全体が2,600万円であることを踏まえ、
合理的な寄与分は全体の約70〜75% と評価されました。
■5.兄弟間での心理的調整
法律上は長男の寄与分が大きいことは明確ですが、
現実には 兄弟の感情調整 が不可欠です。
相談室では次の方法で折衝しました。
- 長男は法的に認められる最大寄与分を提示
- 弟・妹に「金額換算の根拠」を詳細に説明
- 弟・妹も一定の取り分を確保できるよう配慮
結果、双方が納得できる落としどころを計算しました。
■6.最終合意案
- 遺産2,600万円を以下のように配分
|
相続人 |
配分額 |
根拠 |
|
長男(Gさん) |
1,950万円 |
寄与分70〜75%反映 |
|
弟 |
325万円 |
遺産の残りを法定相続分に準拠 |
|
妹 |
325万円 |
同上 |
- 弟・妹も「最低限の取り分を確保できる」形で納得
- 長男は「15年間の介護を正当に評価してもらえた」と満足
- 遺産分割協議書に全員署名捺印して成立
■7.実務での注意点
- 寄与分の計算は感情ではなく、事実・金額で整理
- 時間換算・費用換算が基本
- 介護記録や領収書を整理しておく
- 後で説明可能にしておくことが重要
- 事前に兄弟に説明して納得を得る
- 法律的には寄与分が認められても、感情的に納得しなければ揉める
- 弁護士・専門家の仲介があるとスムーズ
- 第三者が計算・説明すると、対立を避けやすい
■8.まとめ
- 介護した長男の寄与分を巡る争いは、相続で最も多いトラブルのひとつ
- 法律上の寄与分は、時間・労力・金銭を換算して算定可能
- 感情的な対立を避けるため、明確な計算と説明が必要
- 専門家の介入で、兄弟全員が納得できる解決が可能
今回のケースも、典型的だが十分実務的で再現性のある問題として
多くの相続相談で類似の事例が発生しています。
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つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗
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習志野市を拠点に遺産分割の提案
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