つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗

相続人の一人が“預貯金を先に引き出してしまった”ケース — 使い込み疑惑で兄弟間が対立する典型例と実務的な解決

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相続人の一人が“預貯金を先に引き出してしまった”ケース — 使い込み疑惑で兄弟間が対立する典型例と実務的な解決

相続人の一人が“預貯金を先に引き出してしまった”ケース — 使い込み疑惑で兄弟間が対立する典型例と実務的な解決

2025/12/01

相続でもっとも揉めやすいテーマの一つが、
「故人の預貯金を、相続人の一人が生前・死後に勝手に引き出してしまう」
という問題です。

これは決してレアな事例ではありません。むしろ、つだぬま相続相談室でも最上位でトラブル件数が多い典型パターンです。

介護のために引き出した

入院費の支払いのために使った

生活費としてもらったつもりだった

父に頼まれて管理していただけ

単に使い込んだ

など、主張は様々ですが、家族の信頼関係に深いひびが入る案件でもあります。

本稿では、一般的な事件例をベースに、専門家としての実務対応・着地点までわかりやすく解説します。

1.よくある状況:母の入院中、長女がキャッシュカードを管理し、他の兄弟が不信感を抱く

相談でもっとも多いのは次のようなケースです。

● 典型的な状況

被相続人:母

相続人:長男・長女・次女の3人

母は晩年に長女と同居

長女がキャッシュカードを預かり、病院費・買い物などを管理

母の死亡後、通帳を確認したところ残高が大幅に減っている

長男・次女が「これは使い込みでは?」と疑い

長女は「母の介護や生活費に使っただけ」と説明

レシート・領収書はほぼ残っていない

兄弟関係が険悪に

このケースはごく日常的で、特定の「悪意」がなくても発生します。

問題が起きやすい理由

家族という甘えから、領収書を残す習慣がない

現金支払いが多く、記録が残りにくい

介護負担をしていた側に「正当な補償意識」が生まれやすい

遠方にいる兄弟が不信を抱きやすい

医療費と生活費が混在し、客観的な整理が難しい

結果として、
「使い込みではない」ことを証明するのが極めて困難
という状況が生まれます。

2.預金の引き出しは“遺産の前取り”に該当し得る(特別受益)

兄弟間の争点になるのが、
「引き出された預金は相続人の取り分から控除すべきか?」
という問題です。

法的には、次の2点を軸に整理することになります。

① 生前の引き出し → 特別受益の可能性

母の生前に長女が引き出して使っていた場合、それが

母のための支払い(病院代・介護用品など) → 問題なし

長女自身のための支払い → 特別受益(前取り)として相続分から控除

となる可能性があります。

ただし、証拠がないと立証が難しいのが実務の現実です。

② 死亡後の引き出し → 法的にはNG(払戻し義務)

死亡後の預金は、正式には
相続人全員で遺産分割が終わるまで誰も単独で引き出せない
というのが原則です。

よくある例として

葬儀費用に使った

生活費などで勝手に引き出した
などがありますが、法的には

**「不当利得」または「遺産の前取り」

→ 基本的には返還対象**

と整理されます。

3.“使い込み”か“母のための支払い”か?争点の整理ポイント

兄弟間で争いが生じた際、明確にすべき点がいくつかあります。

(1)出金の理由・時期

生活費の立替

病院費

介護用品

親の趣味・娯楽費

長女自身の出費
これらを区別して整理する必要があります。

(2)引き出し額の妥当性

たとえば、
母の生活費が月5万円程度なのに、月20万円引き出している
など、不自然な金額があれば疑義は強まります。

(3)母の意思の有無

「長女に任せていた」

「生活費として渡してよいと言っていた」

などの主張はよくありますが、証拠が乏しいため争点になりやすい部分です。

4.話が進まない“悪循環パターン”

実務でほぼ毎回見る悪循環があります。

① 長男・次女(疑う側)

「長女はお金を使い込んでいるはずだ。説明しろ」

② 長女(管理していた側)

「全部母のために使っただけ。疑われる理由はない」

③ “証拠がないので決着がつかない”

この構図が延々と続きます。

こうなると相続がいつまでも終わらず、
遺産分割協議が完全にストップします。

最悪の場合、家庭裁判所の調停へ進むことになります。

5.つだぬま相続相談室の実務:このケースをどう整理して解決するか?

当事務所が最初に行うのは、
**「感情論の棚上げ」と「数字の整理」**です。

ステップ1:通帳・入出金を全期間確認

日付

金額

ATMの場所

などから
**「不自然な出金」**を特定します。

ステップ2:使途の推定作業

領収書がなくても、

介護の時期

入院の期間

平均的な生活費

家族からのヒアリング

などにより、
“合理的な金額”に近づける作業を行います。

ステップ3:3者が納得できる妥当額を算定

完全な真実が不明でも、

生前の母の状況

生活水準

介護負担

引き出された額
から、
**「落としどころ」**を作ります。

ステップ4:代償案を提示

不自然な金額の一部を長女の相続分から調整

または代償金として支払う

または他の財産との総合調整

など、現実的な方法を提示します。

ステップ5:遺産分割協議書に落とし込み、相続を完了

感情論で止まっていた議論が、
数字と書面の力でスムーズに進むようになります。

6.実際の事例(匿名加工)

相談者:次女(40代後半)
「母が入院中、姉が通帳を預かっていました。亡くなった後に確認したら200万円ほど減っていて…。姉は“母のために使っただけ”と言っていますが納得できません。」

当事務所の対応

通帳を5年分確認

医療費の時期と出金時期を照合

生活費の合理的推計を実施

明らかに説明不能な出金約70万円を特定

相続分の調整案を作成

長女・長男も含め全員で協議

長女が70万円を代償金として支払い、和解

結果

兄弟関係が悪化せず、
相続手続きもスムーズに終了。

依頼者からは
「専門家が入ったことで姉を責める必要もなく、冷静に話し合えた」
との声をいただきました。

7.まとめ:預金の“使い込み疑惑”は数字で整理すれば解決が早い

このテーマは非常に多い相談内容ですが、以下が重要です。

✔ 領収書がなくても整理は可能

✔ 感情論のままでは一歩も進まない

✔ 専門家が数字で整理して提示するのが最速の解決

✔ 調停になる前に、専門家仲介での合意形成が圧倒的に得策

預金の使い込み問題は、家族の関係が壊れやすいデリケートなテーマです。
“不信感を解消し、事務的に淡々と進める”ことが最良です。

つだぬま相続相談室では、
出金分析 → 調整案提示 → 遺産分割 → 相続登記
までワンストップで対応しています。

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