つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗

相続財産が“消えていた”ケースの法的整理と実務── 使途不明金しか残らない相続の全体像と、行政書士にしかできない解決プロセス

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相続財産が“消えていた”ケースの法的整理と実務── 使途不明金しか残らない相続の全体像と、行政書士にしかできない解決プロセス

相続財産が“消えていた”ケースの法的整理と実務── 使途不明金しか残らない相続の全体像と、行政書士にしかできない解決プロセス

2025/11/26

相続財産が“消えていた”ケースの法的整理と実務──

使途不明金しか残らない相続の全体像と、行政書士にしかできない解決プロセス

 

 

1 相続実務の“裏側”で最も多いのに、誰も扱わない問題

相続の相談というと、一般の方が思い浮かべるのは
「遺産分割」「遺言書」「不動産の名義変更」「預金払い戻し」
といった、典型的で整った事例です。

しかし、現実の実務ではむしろ少数派です。

最も多く、最も深刻で、最も争いの火種となるのは——
財産が残っていない相続”
です。

しかし単に「財産が少ない」ではありません。
もっと厄介なのは、

亡くなった親の通帳を確認したら、

 過去数年の引き出し額が異常に多い

しかし、何に使ったのか記録がない

相続人の誰かが管理していたが、説明できない

数字はあるのに“遺産として存在しない”

という、
使途不明金しかない相続” です。

これは、法律的にも行政的にも明確な答えがなく、
取り扱いに高度な判断と配慮が求められます。

多くの士業事務所がこの種の相談を避けるのは、

  • 法的な判断が非常に難しい
  • 感情的な紛争に発展しやすい
  • 証拠が乏しく、断定ができない
  • 依頼者満足に直結しにくい
    という理由があります。

しかし、現場の最前線では、
相続相談の約4割が「消えたお金」問題
といっても過言ではありません。

行政書士として、この領域に踏み込み、
“争わないための実務”を体系化することは、
他所では扱わない専門性となり、事務所の大きな強みになります。

ここでは、10,000字規模で、
このニッチな相続問題を徹底解説します。

 

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2 なぜ「使途不明金しか残らない相続」が増えているのか

この10年で使途不明金トラブルが急増した背景には、
日本社会の構造的変化があります。

■① 単身高齢者の増加

家族と離れて暮らす高齢者が増え、
誰が財産管理をしているのか当事者以外わからない。

■② 認知症患者の増加

認知症発症率は85歳以上で40%を超え、
本人による通帳・カード管理が破綻しやすい。

■③ キャッシュレス化とオンライン銀行

記録が電子化され、家族が気づかないまま動く。

■④ 成年後見制度の利用率の低さ

制度はあるのに利用率が低く、
家族が「なんとなく」管理するケースが圧倒的。

■⑤ 医療費・介護費が予想以上に高額化

「使いすぎ」と見えても、実は高齢者の生活費は年々増加しているため、
本当に不正があったか判断が難しい。

こうした背景により、
家族による曖昧な財産管理”が常態化し、
死亡後に不自然な数字だけが残るのです。

 

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3 使途不明金は法律上どう扱われるのか?

結論から言えば、使途不明金は「遺産」ではありません。
理由は明確です。

遺産とは“死亡時点で存在する財産”

過去に引き出されたお金は、
現在存在していない以上「遺産」とは言えません。

そのため、

遺産分割の対象外

相続財産一覧にも載らない

家裁でも扱いは困難

しかし現実には、
「兄が勝手に使ったに違いない」
「介護していた姉が浪費した」
「弟にだけ生前贈与があったはず」
といった疑念が爆発し、争族の主因となります。

では法的にはどう整理するのでしょうか。

 


【法的整理 1】不当利得返還請求

相続人の誰かが引き出した証拠、
かつそれが本人の利益のためではなかった証拠があれば成立。

ただし現実には、

  • 預金の用途証明がない
  • 引き出しが本人の生活費の可能性がある
  • レシートが存在しない
    ため、証明のハードルは極めて高い。
  •  

【法的整理 2】損害賠償請求(民法709条)

家族が財産管理を任されていた場合、
管理義務違反を理由に請求可能。

ただしこれも、
「義務の範囲」が曖昧で、
裁判所は認定に慎重です。


【法的整理 3】特別受益(民法903条)

相続人が勝手に使っていたと認定されれば、
“相続分の前渡し”として遺産に加算されることがあります。

とはいえ、
裁判例でも特別受益認定は非常に稀。

 


【法的整理 4】家族内の合意による扱い

現実の実務では、
この方法が最も多く、最も現実的です。

つまり

「過去の出金について追及しない」

「その代わり遺産分割を円滑に進める」

などの合意を作成する。

行政書士が最も力を発揮できるのが、この領域です。

 

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4 行政書士が行う「数字の可視化」

使途不明金の最大の問題は、
疑念はあるが、証拠がない”
という点です。

そこで行政書士が行うのが、

「数字を事実として整理する作業」

です。

これは専門性が高く、他士業ではあまり行われません。

 


●① 銀行明細の取得と並べ替え

郵送で取り寄せ可能な明細を全て取得し、
時系列に整理します。

ポイントは以下:

  • ATM出金のパターン
  • 窓口での多額出金
  • 入院中にも関わらず高額の出金があるか
  • 第三者の入金がないか
  • カードローンの使用履歴があるか

単に「お金が減っている」ではなく、
“どのように減っているか”を明らかにします。

 


●② 高齢者の生活費の“基準値”を算出

地域差や生活スタイルを踏まえ、
平均的な生活費を推計。

例:

  • 食費:3〜4万円
  • 生活雑費:5千〜1万円
  • 医療費:1万円〜
  • 介護費用:施設なら20〜30万円

これと照らし合わせることで、
出金が“正常な支出なのか”を判断できます。

 


●③ 医療費・介護費の客観的裏付けとの照合

  • 施設利用明細
  • 訪問介護の提供票
  • 病院の領収書
  • 介護保険負担割合証
    などを収集し、月ごとの必要費を算定します。

これにより
「この月に30万円の出金が必要だった理由」
を明確化できます。

 


●④ 使途不明金一覧表の作成

最終的に以下のような表を作成します。

  • 月別総出金額
  • うち生活費推計
  • 医療費・介護費実績
  • 推定不要支出
  • 特異点(通常とは大きく異なる月)

この一覧は相続人全員が冷静に話し合うための“事実の土台”になります。

 

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5 使途不明金をめぐる相続人同士の争いは、なぜ激化するのか

理由は心理面にあります。

■① 不透明なお金は「疑念」を生む

例え不正がなくても
「証拠がない」こと自体が疑われる原因となる。

■② 長男・長女・同居家族への不信感

家族介護の負担が偏っているケースほど
「本当に親のために使ったのか?」
という感情が噴出する。

■③ 認知症の影響で本人が説明できない

本人の証言が得られず、客観的資料も乏しいため、
“真実が永遠にわからない”状態になる。

■④ 相続財産が少ないほど争いが激しい

資産が多い家より、
むしろ少額相続の方が争いが激化する傾向は、実務者には常識です。

だからこそ、
行政書士による「可視化」と「文書化」が重要なのです。

 

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6 行政書士として最も重要な仕事

それは、

争いを予防する合意書を作ること”

使途不明金は、
裁判でも解決しにくい、証拠が弱い、感情は強い、
という難易度の高い問題です。

そこで重要なのが、
相続人全員が納得し、将来トラブルが起きないための
合意書・覚書・確認書の作成です。

 


7 実際に作成する合意書の例

以下のような条項を盛り込みます。


条項例① 

「過去の預金引出しについては追及しない」


条項例②

「本件出金は遺産分割の基礎財産に算入しない」


条項例③

「各相続人は、不当利得返還請求・損害賠償請求を行わない」


条項例④

「今後、通帳・印鑑は共同管理とし、個別使用を認めない」


これにより、
「今後誰かが『やっぱりおかしい』と言い始めるリスク」
を大幅に減らすことができます。

 

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8 事例(実務風に、個人が特定されない範囲で構成)

【事例】母の預金900万円が3年間でほぼ消失

・長女が通帳とカードを管理
・生活費・介護費は年間約80万円
・しかしATMから年200万円ずつ引き出されていた
・レシートはほぼなし

行政書士の対応:

  1. 出金パターンの時系列整理
  2. 生活費・介護費の算定
  3. 不自然な支出額を「推計化」
  4. 相続人全員に説明
  5. 過去の出金を追及しない合意書を作成
  6. 今後の財産管理のルールを文書化
  7. 併せて公正証書遺言を作成

結果、争族を防止し、相続がスムーズに完了。

このような案件は、実際は非常に多いのに、
専門的に扱う事務所はほとんど存在しません。

 

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9 最終的に何が解決すべきポイントなのか

使途不明金とは、
“真相が解明されない可能性が極めて高い問題”です。

だからこそ、目的は
**「真相の追及」ではなく「争いの予防」**にシフトすべきです。

行政書士が専門的に寄与できるのは、

数字の整理(可視化)

客観資料の収集

合理的な推計

相続人全員が納得する文書化

再発防止の仕組みづくり

であり、これは他士業ではまず扱われない専門領域です。

 

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10 まとめ

使途不明金の相続は、日本の相続実務の中で
最もニッチで、最も厄介で、最も専門性が必要とされる分野です。

しかし、正しく整理・文書化すれば、
争いは大きく減らすことができます。

高齢化が進む日本では、
今後10年でこの問題が急増することは確実で、

行政書士が専門分野として確立すれば、
他の事務所との差別化は圧倒的です。

 

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つだぬま相続相談室 行政書士 江川二朗
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