【解決事例】「身寄りのない大叔母の遺言」と「遺言執行者の辞退」を乗り越え、渋谷の一等地を次世代へ繋いだ資産承継
1. 遺言に込められた、養女として生きた大叔母の想い
今回の主役は、東京・渋谷区の住宅地に土地をお持ちだった大叔母様です。大叔母様は生前、ご自身が**「養女」**として育ち、戸籍を遡っても実の両親が判明しないという、複雑な生い立ちを抱えていらっしゃいました。
配偶者もお子様もおらず、法律上の「相続人」が不在、あるいは極めて遠い存在である中、大叔母様が頼りにしたのは、日頃から交流のあった姪(依頼者の母)とその家族でした。
「自分が亡き後、この土地を路頭に迷わせたくない。信頼できる彼らに託したい」 そんな切実な願いが、法定相続人ではない親族数名に持分を遺贈する「公正証書遺言」という形になったのです。土地の一部(=持分)といっても、土地の全部の評価額は1億円以上の資産であり、その重要性を大叔母様も認識しておられたのでしょう。
2. 突然の停滞:遺言執行者の辞退と、江川の選任
ところが、大叔母様が亡くなって5年後、事態は急変します。 遺言書で指定されていた税理士が、病気を理由に遺言執行者の就任を辞退。持分が数千万円の価値がある渋谷の不動産手続きは、完全にストップしてしまいました。
ここで私(江川)がご相談を受け、まずは「動かなくなった遺言書」に命を吹き込むため、家庭裁判所へ**「遺言執行者選任」の申立て**を行いました。裁判所に認められ、私が新たな遺言執行者として就任したことで、ようやく時計の針が動き出したのです。
3. 重なる困難:受遺者の死と「数次相続」の発生
手続きを進める中、さらなる難題が浮上します。 遺贈を受けるはずだった依頼者の母が、半年前に他界。これにより、「大叔母からの各親族への直接の遺贈」と「母が受けるはずだった権利の相続人への相続」が入り混じり、権利関係はパズルのように複雑化しました。
親族間での遺産分割協議が必要となり、関係者は当初の予想を超えて広がっていきました。
4. 「負債」にさせないためのコンサルティングと決断
ここで直面したのは、単純な登記の問題だけではありません。 相続人の一人である依頼者の弟さんは、金銭感覚に不安があり、数千万円の価値がある渋谷の一部の持分を引き継いでも「固定資産税が払えない」「管理ができない」というリスクが明白でした。そこで、依頼者のご長男が、依頼者の弟の持分を譲り受けてもいい(贈与税も負担する)とのご提案がありました。
私は遺言執行者として、単に書類を作るだけでなく、**「将来、この不動産が家族の負担にならないための着地点」**と考えました。
権利を依頼者に集約させる遺産分割協議の成立
弟さんの持分を、将来を担う「長男(依頼者の息子)」へ贈与するスキームの構築
5. 結末:渋谷の地を守り、次世代へ繋ぐ
遺贈、数次相続、そして贈与。複数の法的手段を組み合わせた結果、土地・家屋ともに**「依頼者と、その長男」の共有名義**として、無事に名義変更を完了しました。
もし遺言がなければ、あるいは執行者が不在のまま放置されていれば、更に複雑な遺産分割協議が必要になり、最終的には管理不能な空き家になっていたかもしれません。大叔母様の「託したい」という想いを、法的な不備なく次世代へ繋げられた瞬間でした。
